教育虐待という言葉が作られる少し前のことだったと思います。小学校受験のために両親は私の利き腕を矯正し、絵を決まった通りの手順で描くように指導し、地元の学校に入学する予定の友人らから遠ざけました。
私が塾の問題を解けずに泣き出してしまうと父は高い声で「こんなこともできないお前は将来ホームレスになるぞ。新宿で段ボール巻いて寝る練習でもしろ。」「俺を病気にする気か。お前は俺を病気にしたいんだな。」とよく怒鳴り付けました。
泣いていることがバレると怒られるので鼻をかむことも啜ることもできず、いつも鼻水を拭いとって飲み込み、トイレの水で顔を清めていました。
苦労の甲斐あってかどうにか1つ合格をもぎとりましたが父親の転勤が決まり、地方の公立小学校へ通うこととなりました。
その頃の私はそのことをあまり気にしていなかったのですが、成長するにつれて両親が私に施した教育に疑問を持つようになりました。
あの頃は受験のために生き物の描き方を徹底的に矯正され、描いてはいけない生き物(蛇とか)も指定されてしました。教わった通りの生き物を教わった通りの手順で描かなければ怒られました。
受験当日、実際に出されたお題は城でした。自分の理想の城を描けと言われました。城を描く練習は一度もしたことがなかったので、その場で泣き出す子やお題と全く関係のない動物を描き出す子が何人もいました。
試験が終わって先生が泣きながら子どもに謝り続けていたことを、母はちょっとした笑い話として友人に語っていました。
私は親に恵まれていると思って生きてきましたが、あの1年はカルト宗教のような環境だったように感じます。正しい教育なんてものがあるのかはわかりませんが、城を描けと言われた子どもが泣きながら馬を描くような教育は絶対におかしいと思います。
両親を恨みたいわけではありませんが、私が今苦しんでいることに何かわかりやすい名前がつけば納得できそうな気がしています。
私が受けた教育は虐待と呼ぶのに値するものだったのでしょうか。親目線からでも子ども目線からでも、意見を聞かせてください。