将来に夢も希望もありません。
 詐欺に騙されたのなら諦めもついたかもしれません。50歳手前でこんなに悔しく理不尽な思いを、それも親にさせられるとは思いませんでした。
 私は長男で独身です。両親とは同居しています。なるべく会話はしないようにしています。近くに嫁いだ妹がいます。
私の父親は、窮地に陥ると失踪しては自殺の真似事をしてわざと発見されて戻ってくるということを繰り返してきた男です。
死ぬ気など無いのです。そうやって帰ってくれば腫れ物となり周りから責められずに済むと言う計算からそうするのです。
 最初は私が16歳の時でした。あれから34年後の今に至るまでに確か4回そんなことがありました。
 現在両親は居酒屋を営んでおります。こんなことになる前はそれでも親子3人で店を切り盛りする事も視野に入れておりました。
 最初の失踪はさすがに心配しました。原因は結局借金です。債権者でもある親戚の所に長男というだけで母親に連れて行かれ頭を下げさせられました。16歳の時です。「伯父さん、どうか俺たち家族を見捨てないでください。助けてください」・・・事前に母親から言い含められた台詞でした。子供を表に出して同情を買おうとするあたり、自殺の真似事をする父親と案外似た者夫婦なのかもしれません。狭い街の中の出来事です。口には出さなくとも周りはみんな知っています。そもそも父親が金を借りたのは親戚と街のサラ金。このサラ金の経営者の息子が私の同級生だったこともあり、あの日から私の自己肯定感は下がりっぱなしなのだと思います。金を貸す側と借りる側の子供・・・まして借りた側の父親は一切投げ出して疾走し、同情される舞台を整えてノコノコ帰ってくる訳ですから。「あそこの倅だ」・・・そう陰口を言われているのだろうなと、惨めな気持ちになったものでした。当時妹は11歳。私よりよほど不安で辛かったと思います。
 私が一人っ子なら、あの二人を捨ててそれこそ失踪してどこかで人生をやり直すことも考えたと思います。でもそれをやれば妹に負担が掛かるのではないか?そう考えると行動には移せませんでした。
 ・・・あの時から今までのことを知ってもらおうと思ったらかなりの長文になってしまうので。16歳のあの時から色々ありましたが父親は3回目の失踪の流れから他県で仕事を見つけ、母親が追いかけることとなり、私は郷里でしばらく一人暮らしをしていました。30歳の時に勤めていた会社から転勤の辞令があり長男でもあったのでどうせ郷里を離れるのならと、会社を辞め両親のもとに行きました。今思えばこの選択が私の失敗でした。
 中古ながら住宅を購入した父は震災の後に知人から借金をして居酒屋を始めます。水商売ですから浮き沈みもあり収入も安定しません。そんた時、母親から連帯保証人の打診があったのです。住宅ローンが重くなってきた。毎月の支払額を少なくするための「引き直し」をするために母親と二人で連帯保証人として名を連ねるというものでした。母親いわく「お父さんが死ねば保険金で返済できることになっている」「将来は家も土地もお前のものなるのだ」「絶対迷惑は掛けない」とのこと。長男でもあり父の保険金で返せるなら・・・と、判を押しました。
 言い忘れましたが私の母親は浪費家で、お金を貯めるということができません。飲食店を営んでいるのですから店の食材をうまく使って自炊することで食費を浮かし食材の入れ替えをすれば良いものを(これが飲食店経営の一番のメリットだと思うのですが)昼は毎日のようにコンビニ弁当や外食。日曜の夕食も妹が孫を連れてくることあって毎回わざわざ買い物にいってしまいます。
 初めて連帯保証人に判を押した翌年、今度は母親からこう言われました。「毎月のやりくりが大変だからお父さんとお母さんの生命保険を解約することにした。お父さんが死んでも保険金でローンを払うことはできなくなるけど、家と土地を売れば返せるから今年も判を押してくれ」とのことでした。私が断れば妹に頼みに行くに決まっています。最悪家と土地を売却することでなんとかなるならと、不安はありましたが泣く泣く判を押しました。
それからしばらくしたある日、父親が4回目の失踪をします。今度は落ちたところで死にもしない高さの崖で倒れていたそうです。もう、笑うしかありませんでした。私も親戚も口には出しませんが呆れています。こんな人間の血を引いているのかと思うと本当に自分が嫌いになります。
 この失踪からしばらくして私は二人から信じられない話を聞かされるのです。父親の失踪の原因は滞納していた住民税の督促。以前勤めていた会社が納めていなかったようで遅延金も含め莫大な督促があったようです。期日までに払えなければ家と土地を差し押さえるという最後通告があったようでした。あの二人は、納税期日までその事を私に隠していたのです。そして聞かされたのは、家と土地の差し押さえ・・・。信用金庫への900万近い残債はそのままに家も土地も失うことになってしまいました。
今もその家に住んで入るのですが、母親の話を鵜呑みにすれば競売にかけられた家を落札した不動産屋の好意で借家として現在も住まわせてもらっているようです。もちろんいくらか家賃は払っているのでしょう。
 こうして私は家も土地も残してもらえず、親の生命保険さえ受け取れず、将来借金だけは背負わされる事になったのです。春のたびに連帯保証人の判を泣く泣くついていますが、二人共「なんとか頑張るから」と口では言っていますが存命中に完済など出来るわけもなく、そんな気も無いはずです。なにしろ私が苦しむのは二人が死んだあとなのですから。
 せめて周りにはこの状況を知ってもらいたい。そう二人に申し出たのですが「店の評判が悪くなるから言わないでくれ」とのこと。借金は私に背負わせ、周囲には気のいい居酒屋の店主と女将でいたいようです。
 店の常連から呼び出された事があります。「二人共もう年だ。お前は長男なのにどうして店を継がないのだ?」と問い詰められました。そのころから私は既に生きることへのモチベーションが下降する一方でした。仕事をしても結局は親に背負わされた借金を返すために働くようなもの。あの二人に何かあれば介護も考えねばなりません。借金を払い家賃を払い親の介護に時間を奪われ日々の生活を営んでいかねばならない・・・長男として残してもらえるのは借金だけ。なんのために働いているのか。そう考えると仕事も長続きしません。少しでも嫌なことがあると辞めてしまう。そんな事を繰り返しています。我慢して働いたって、先を考えたら我慢するだけ損。
 傍から見れば店も手伝わず転職を繰り返したり昼間からブラブラしている放蕩息子に見えているはずです。だからこそ呼び出されて問い詰めれるのです。私は言いたいことも言えず適当にお茶を濁すだけ。私の置かれた状況を知らない周りはとにかく二言目には「長男なんだから」と言います。長男なんだから店を継げ、長男なんだから親の面倒を見ろ・・・その長男に親が何をしでかしたかなど全く解っていないのです。
 母親の姉、私にとっては叔母になりますが彼女とその子供、私にとっては従兄弟ですが、彼らは私の状況を知っています。それと義理の弟、妹の夫です。知っている親戚連中は私に関わろうとはしません。それこそ腫れ物、どう声を掛けて良いのかも判らないのでしょう。誰にも言えず誰にも判ってもらえず。
 勇気があるのなら自死したい。全てを書き留めて親より先に死んでしまいたい。そこまでしないとあの二人は自分たちがどれほどの事をしたのか解らないのです。自死できる勇気が欲しい。
 私は今、私を騙した詐欺師達と暮らしています。この詐欺師は子供を踏み台にして世間ではいい顔をしてします。踏み台にされた息子は借金と放蕩息子という汚名を一手に被って毎日失望の中で生きています。父親とはもう数年会話していません。母親とも必要最低限です。可能な限り首を縦か横に振って意思表示するようにしています。会話したくないのです。
 毎晩布団に入ると先のことが頭をよぎります。朝を迎えるたびに債務者となる日が近づいてくるのです。9月から社会とうまく関われない若者の就労支援をする団体で契約社員として働き始めました。別にひきこりを救ってあげたいわけではありません。徒歩で通えるところと決めて応募していたらそこで採用になっただけです。今の車は来春車検なのですがもう車検は通らないと言われました。次の車の購入など到底出来ません。いつ数百万円の債務が降り掛かってくるか分からないのに、自動車ローンなど組めない。だから先を考えて徒歩か電車バスで通える所を探していました。
 この職場ももう辞めたい。来年の3月までの契約ですが仕事内容も思ったようなものでもなく、さすがにもうしばらくは通わないと行けないとは思っていますが、正直朝起きるのが辛いです。もう身体が会社に行きたがっていない。わたしこそ、ひきこもりたいです。そもそも施設を利用している人たちを見ると、甘えているようにしか思えない・・・。自分さえしっかりしていれば希望に満ちた未来があるだろうに。親に未来を奪われ希望も持てない人間がよもや相談員だとは誰も思わないでしょう。
 バイクに乗ってツーリングをするのが私の長年の夢でした。数百万円借金できるのなら、車もバイクも買えただろうに。そういう借金なら、一生懸命働いて返す気にもなるでしょう。
なんのために生きているのかわからないです。唯一救いなのは独身だったこと。妻や子供がいた上で実の親に借金など背負わされていたら目も当てられなかったでしょう。結婚もしたくないわけではなかったのですが、今更人の人生まで背負うことはできません。
親の介護、借金の返済、生活費の捻出、親の葬式、家の後始末(親の死後、家賃が払えなければ引っ越しせざるを得ず、また今の家は一人には広すぎるので)・・・全部私一人です。
 こんな思いをさせられるような迷惑を私は親に掛けてこなかった。本当なら自暴自棄になって道を踏み外してもおかしくない。正直いつまで平静でいられるか自信がありません。本当に糸一本でつながっている感じです。
周りは誰も判ってくれない。私がまともな精神状態だと思っている。親でさえも。
 親の生きている間に死にたい。親の借金の為に生き、その親の面倒まで見るなどマッピラです。そんな思いをするくらいなら、さっさと死んでしまいたです。もう働きたくもない。
 二階の部屋にいると時折階下から二人の言い争う声が聞こえてきます。店の経営のことなのか・・・そんな時に母親から話しかけられると目眩がします。「話がある」と言われて私にとって良い話だったことなど一度もないのです。これ以上あの二人の後始末などしたくない。
 仕入れに行った父親が車で事故を起こしたらどうしよう。
 店で食中毒を出したらどうしよう。
 さらなる借金の保証人を頼まれたらどうしよう。
 あの二人の介護費用はどうしよう。
 あの二人の葬儀代はどうしよう。
 引越し費用、次に住む場所の物色・・・。
 連帯保証人から債務者になったら、自己破産も視野に?
 なんのために働いているの?
 毎日毎日、不安と絶望に押し潰されそうです。そんな私の苦しみを周りの人たち、両親せさえ気付いていない。
 コロナ騒動の持続化給付金の時もそうでした。何も知らない周りの人達は手続きに四苦八苦している二人を見て「長男のお前がなんで手伝ってやらないんだ?」と私に言ってきます。あの二人のしたことで文句を言われるのは私なのです。
 どうせ働かなければいけないのならこんな状況を忘れさせてくれる仕事がしたい。だから仕事がつまらなければ行きたくなくなる。心と身体にムチ打って出勤し、夜な夜な頭を抱え泣くことでなんとか冷静でいられる私にとって、ひきこもりなど恵まれた甘えとしか見えません。今の仕事も先は長くないと思います。
 二人の死後、二人の後始末のために人生を棒に振るなど我慢できない。全て書き留めて死をもって周りに知らしめ、あの二人には「息子を死に追いやった親」のレッテルを背負って余生を生きてもらいたい。自死の勇気があればそうしたい。
 夜も眠れません。頭を過るのはこの先を考えた悲観的な思いだけです。
 何もやる気になれない。死ぬ勇気もない。仕事ももう行きたくない。眠れない。
 毎日つらいです。助けてください。